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予告編


市川雷蔵主演作品をつづけます。



わずか37歳という若さで癌で亡くなったこと、

それまで怒濤の(15年間で160本)出演などに関しては、

065「眠狂四郎 無頼剣 (1966)監督 三隅研次 の稿で触れてますので、未読の方は是非。

 ↑ ここでも書きましたが、「(本業の)歌舞伎は歳を取ってからもできるが、映画は若いうちに」という本人の言葉と想い。ハードワークと癌との因果関係があったのかどうかは分かりませんが、一気に駆け抜けた俳優人生、激スタア人生だったのだなあとしみじみ。

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もともと歌舞伎役者ですから、時代劇はお手のもの。そしてまるで役者は目が命とばかり、付けまつげバッチリ眉毛くっきりイカす〜

なので、現代劇になると目のメイクが使えません。雷蔵さん、意外と古風とゆうかさすが雅(みやび)なお顔立ち、一重まぶたの優男(やさおとこ)って感じ。


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この映画、雷蔵さんは「殺し屋」です。

でもって、表向きの顔は個人経営の割烹みたいな板前さん。そこに裏社会を通じて依頼があるわけです。

笑いません。

ヤクザの親分が、対立するヤクザの親分を殺してくれと500万円の依頼を、一度断って、次に2000万円に釣り上げて実行します。殺しの手口は、のちの「必殺仕事人」みたいに首筋に針でシュっと、鮮やかです。


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右:ザ・ヤクザの親分・小池朝雄 (1931-1985)


雷蔵さん、大金を手に入れても、笑いません。


そんなクールな雷蔵さんに惚れてしまい、何度断っても雷蔵割烹に入り浸って、勝手に仲居さん気取りになっている女に 野川由美子 (1944-)  。美人です、フェロモン出して迫りますが、雷蔵さんひとりで寝ます。


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親分・小池朝雄の部下、我らがミッキー・成田三樹夫 (1935-1990) が、組に内緒で麻薬取引の情報を持ち込み、雷蔵に人肌脱いで欲しい(2億円が手に入る)と迫りますが、相変わらずうさんくさいミッキーなので断られます笑。

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左奥:成田三樹夫(ミッキー)

ミッキーは野川由美子をセックスでくどき、由美子ちゃんも、もとはヤンキー貧乏娘なので、雷蔵が殺し屋で大金持ちなことを知り、ミッキーと二人で画策します。

ラストはこのアホアホな二人と、かり出された雷蔵さんの三人が、麻薬取引の現場に潜入して、果たして2億円は手に入れられるのか?雷蔵さんはハメられるのか?という物語。

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この時代にクールで、余分な生活臭のない、抑制がきいた物語を作った映画人たちに感謝。

そして思えば、外国のハードボイルド映画などの影響からこうした映画が作られ、さらに模倣されて行ったんだなあと。

であえて気になったことを言うと、生活臭を無くした代わりに、出演者たちの生い立ちや背後関係などがまったく見えてこなかったこと。

雷蔵さんはなぜ殺し屋なのかは、なんとなく、2回ほど額縁に入れた小さな写真を見るシーンで分かります。特攻服をきて肩を組む3人の男たち。中央に雷蔵、で恐らく両脇の戦友は散ったのでしょう。そして B-29の爆撃(写真)映像が短く挿入されることから、恐らく雷蔵さんは特攻隊の生き残りで、戦争や国家に対して強烈な反抗があるのだろうということ。

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ま、それだけでも想像できたらそれで充分かな?

面白かったんですが、ぼくはこの映画のあと量産された、似たようなテレビ映画をたくさん見て育ったので、古臭く感じてしまったのは否めません。

また、黒澤明 227「羅生門」小津安二郎  112「浮草」など、名作のキャメラで世界的にも名高い 宮川一夫 (1908-1999) の仕事に関しても、どうもテレビ的なベタな照明が、奥行き感のないセットと合わさって、ラストの乱闘シーン以外にあまり良さを感じることができませんでした(ファン、研究者の方々、ごめんなさい)。

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冒頭、駅の改札を出て、タクシーに乗った雷蔵さんが、見渡す限り更地の先にあるボロアパートに向かうシーン。アパートの名前が「晴海(はるみ)荘」ということから、ロケ地はまさに晴海か、木場とかお台場周辺でしょう。今や高層マンションやら商業施設、さらに埋め立てて林立している現場だと思うと、なんか失われた景色がこうして残っていることの貴重さと、そんな発展した日本にあっても、心がすさんだ悲惨な事件が減らないのはなぜ?とか、つい現実を感じてしまいます。


続編もあるそうなので、機会があれば是非観たい。


あ、そうそう、歌手の小林幸子さんの恐らくティーンエージャー時代の姿も拝めます笑。雷蔵割烹のもともとの仲居さんで、野川由美子の出現により早々に職を追われる哀しい役柄。

予告編 にその愛くるしい姿が残っています。

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 ↑ こうなるのが当たり前以前の姿は貴重。




2019年 9月13日
角川シネマ有楽町
市川雷蔵祭 にて観賞

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