やっと観れた。スクリーンで。
ぼくは1965年生まれなので、1964年の東京オリンピックは知りません。一応ギリギリ母のお腹の中にいたみたいなのですが、でも何も見てません。当時の熱狂、知りません。
だから知りたかった、観たかった。
今まで何度か観賞するチャンス、ありました。だってVHSもDVDもあるので観られたはずです。
でも劇場で、スクリーンで観たい。そう観るべきと考えてスルーしてきて今回、デジタルリマスターとゆうのか、音声までハリウッドのスタジオ使ってレストアしたという状態のものを観賞。
びびりました。凄いです。当時のお金で3億超えの制作費。
記録映画ですよ、までも山ほど競技があるわけですから、100人くらいのニュース映画カメラマンを総動員させて、そう、フィルムで撮るわけです。しかも総天然色=カラーですから。同じ年の キネマ旬報ベストテン2位 を獲得したこの「東京オリンピック」、1位は黒澤明の「赤ひげ」で、それもそれも壮大な(製作費も膨大な)物語でしたがモノクロでしたから。
総監督は 市川崑 (1915-2008) 当時すでにエキセントリックな演出法でその名を馳せていたわけですから、単なる「記録映画」になるわけがない。しかも彼は撮影に入る前に、脚本を書かせたのです。
記録映画、つまりドキュメンタリーに脚本?
公開当時の騒動 Wiki記事
に色んな顛末が書かれていますので、お時間あるかたは是非一読を。
これによると、そのような脚本ありきの演出方法に、ニュース映画専門のカメラマンたちが憮然としたそうです。そりゃそうでしょう、彼らは日々筋書きのない報道カメラマンとして活動しているわけで、そこに劇映画の巨匠さんが現れ、脚本に沿って撮ってくれなんて、恐らくいや絶対に、職人気質のカメラマンたちが反撥したことは当然と言えば当然と思います。
さらに完成試写会では、当時のスポーツ大臣みたいな方が「これは記録映画じゃない!」とほざき(笑)、マスコミがそれに飛びついて大騒動になったとか。
そこまでを調べて知ってから観たので、実はもし奇天烈なことやってたらどうしよう?どっちかと言うと、今までに観た市川崑作品のややアバンギャルドというか、特異な部分に関して、個人的に若干合わないところもあったのでちょっとどきどきしながら観賞しましたが、杞憂に終わりました。
まったくもって「記録映画」です。
ただし、単に記録するのではなく、そこに映画的な表現を加味した(今では当たり前のことだと思うのですが)劇場映画です。
僕の理解は、アスリートたちが金メダルや己の向上のために取り組む4年に一回の祭典を、ただ単に映し撮るだけではなく、そこに隠された苦労や努力や表面に見えてこないものを映さなければ意味が無いということでしょうか。だから最初に脚本を書き、つまり想定して、その意図に沿ってカメラを向ける。結果、その通りにならないかもしれない、けれども監督の、作品の意図があるのか?ないのか?で、見える結果は変わってくると思う。
つまり映画なんです。
市川崑は、記録映画という分野で、映画を創造したのです。
各競技を、ある時はワンカット長廻しでみせたかと思うと、クローズアップを多用したり、モノクロにしたり、実況中継もあれば別撮りのイメージショットもあります。長い長い上映時間「緩急」巧みに使ってます、その技は見事というほかありません。
この映画の観客動員数は、宮崎駿の作品が登場するまで歴代一位だったそうです。それはなにより、戦後の復興がここに到達したような、世界を相手に日本が輝くひとつの試金石だったのではないでしょうか?
ソビエト(現ロシア)相手に「東洋の魔女」と称された日本女子バレーの金メダル獲得の熱戦も、今までテレビの「思い出映像」みたいなものでしか見たことがなかった(しかもモノクロ)のですが、今回カラーでやっと観賞。いくつでもいくらでも名シーン語れますがこのへんにしときましょう。
2020年、東京にオリンピックが帰ってきます。
その前に、みなさんも良ければ是非。当時の町並み、人、その佇まいやらをご覧になってから、果たして日本が今どうなのか?なんかも確認できるかもしれません。
良いとか悪いとかは別にして。
キネマ旬報ベストテン2位
http://cinema1987.org/kinejun/kinejun1965.htm
予告編 Youtube
https://www.youtube.com/watch?v=Tprd7pfzCqo
撮影裏話(現場のカメラマンたちの思い)
https://www.nikkansports.com/olympic/column/edition/news/1593831.html
公開当時の騒動 Wiki記事
オリンピック協会による市川監督インタビュー記事
https://www.joc.or.jp/past_games/tokyo1964/interview/index.html
amazon primeで見れる!
2019年 12月4日
京橋・国立映画アーカイブ
「オリンピック記録映画特集ーより速く、より高く、より強く」で観賞
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