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東京のどまんなかにある 霞ヶ関ビルディング が、どうやって建ったのか?という映画です。


どうでもいい?


ま、そう言わずに。


で、ドキュメンタリー?


ちがいます。


劇映画です。



霞ヶ関ビルディング オープン一年後に製作・公開されたこの映画は、ずばり施行した鹿島建設、大きく出資した住友不動産の「プロジェクトX」です。 いや、当時 NHKのその作り方は発明されていないので、「日本で一番高層なビルディングを作る」とゆう目的のために心血を注いだ方たちの、それを驚くなかれ当時バリバリ働いていた有名著名俳優たち総出演で再現した1本です。


勝新太郎・高倉健・鶴田浩二以外ぜんぶ出てる印象(笑)。


でもすごいことですよこれは。


それは置いといて、企業PR映画だとひとことで言ってしまえばそうですその通りですが、ギリギリドラマ性をもたせようという工夫が随所にあります。そこを語るのはあとまわしにして、高層ビル=当時はそこに「超」がつく。つまり、地震大国日本と戦争に負けた日本にとってこの時代、住宅問題とそれを是正し、天災に備える技術革新は不可欠で、しかしその問題を解決するには、そこに携わる人・企業すべての今までにない努力、創意工夫が必要であるということ。



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霞ヶ関ビルディング   



当時の建築基準法は31メートルまで。そこに規制緩和や法律改正がありもっと上へ行ける!彼らは挑んだわけです。結果的に地上36階、地下3階、地上高147メートル、当時日本一の超高層ビルを作ったのです。



物語は施行する2年前、昭和38(1963)年から始まります。



中村伸郎 (1908-1991)  演じる建築学の老権威(教授)が退官するスピーチから始まります。そこで彼は、日本の高層ビル建築は夢である(現実的ではない)と断言します。地上31メートルを越える(タワーとかではなくビルディング)建築は、鉄骨の問題、材料費・人件費などコストの問題、理論はあっても不可能だろうと。そこにお金を出す側=三井不動産と、造る側=鹿島建設が「日本初」をもくろんで中村伸郎に頭を下げるわけです。

中村が建築の世界に入ったキッカケは、関東大震災。

木造家屋のほとんどが倒壊し、未曾有の被害にあった東京を体験し、耐震構造の探求と、土地(家)を横に求めるのではなく上に伸ばすことはできないかと。その長年の研究成果を実際に試すことができる最後のチャンスに、老齢の中村は賭けます。鹿島建設副社長のポストに着任、しかも同社には多くの教え子たちが勤務しています。



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中村には目標がありました。それは浅草の五重の塔。


震災で壊滅的な被害を受けた東京にあって、五重の塔は微動だにしなかった。それはなぜか?その建築構造を調べ(古人の技術を調べ発展させ)現代の超高層建築に活かせることができないのか?と。

それに応えた教え子たち・技術者たち。 木村功 (1923-1981)   は今までに世界的にもあり得ない鉄骨の形状を思いつき、それによりコストダウン・工期縮小を実現させます(特許取ったみたい)。そう、誰も成し遂げてないプロジェクトですから、誰も見たこともしたこともない建築ですから、予算そのものも常に「?」なわけです。さらに施行前に、新しい基準に見合う材料、工程なのか?など厳しいチェックが入ります。でなんとか造り始めるのですが現場最前線の、とび職のおっさんたちだって、誰も登ったことのない高さでの作業になるわけで、危険がつきまといます。

一応、主役の(錚々たる名優ばかりなので主役はいっぱいいるのですが)ポスター中央にいる現場監督・池辺良 (1918-2010) も口厳しく現場を鼓舞します。



巨大高層建築の謎 (サイエンス・アイ新書)
高橋 俊介
SBクリエイティブ
2008-10-16




2部構成で、前半はおもに技術者の苦闘。後半は作業員のなかから、誰よりも高い位置で作業するクレーンオペレーター・若き日の 田村正和 (1943-)  が、仕事と恋に悩むサブストーリーと、山形の寒村から出稼ぎで高所での雑用をする元・とび職のおっさん ・伴淳三郎 (1908-1981)   の人情話を加えて展開していきます。



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坊やです♡。可愛い。


正和はプライド持ってヤンキーぽく作業してますが、彼が吊り上げた鉄骨を組み立てていくとび職のおっさんが不注意でケガをしたことで、逆に責められたりしてヤケになったり、そんな彼を励ます彼女がいて、正月休みで彼女の実家に挨拶に行ったり。ほのぼの青春です。

ある日の作業で雷に見舞われ(日本映画の効果音の単調さもあるけど、ひっきりなしに爆音みたいな連続カミナリ)で全作業員避難するなか、正和ひとりクレーンに取り残されます。無線で池辺良が、「避雷針があるので大丈夫だから、決して外には出るな!」と命令しますが、正和カミナリ怖くて怖くてパニックになります。運転室から出たい!半狂乱になったとき、なぜか地上にいた彼女が無線をひったくり「がんばって!」とエールを送ります。その彼女のブサイク具合がたまらなく昭和で、で、このような無理矢理な物語があることで、映画は3時間くらいの長さになっているわけです。


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伴淳三郎(写真左・映画のシーンではないです)がそれでも素晴らしかった。無理矢理なドラマを田村正和熱演してるんですが、そこはまあ若すぎて臭くてベタなんですが、伴淳さんの出稼ぎ感とゆうか、この映画で与えられた役柄に対する取り組み方は絶品で、劇場内でも笑いと涙のリアクション見受けられました。やっぱすごい俳優です。



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残念だったのはフィルムの状態。褪色して全編赤みがかったモノクロ映画状態。ノイズ、コマ飛びは少なかったですが、恐らくフィルムがたわんでいるのか?常にピントを探っているような感じでぼやける状態が続き、よくもまあ最後まで観たもんだと自分を褒めました。


あと、予算に関する両社の値引き交渉とか、実際の作業員たちを前にした注意喚起の大演説とか、リアルに追ってて見応えあり。

中村伸郎 (1908-1991)  は言います。このビルをきっかけに、日本は超高層時代に突入すると。そして建物は上に伸びていくわけですから、横に土地があまり、そこは公園などに活用されるだろうと。

ビル完成後2年で超高層の記録は破られ、そのあとは、みなさんお分かりのとおり高層ビルだらけ。

東京を映し出す風景のなかで、東京タワーとこの霞ヶ関ビルディングだけが燦然とそびえ立つ、貴重な映像、語り継ぐべき1本です。




キネマ旬報ベストテン 1969 選外





NHK やっぱりやってました。見たい!







2020年 2月6日
シネマヴェーラ渋谷「没後十年記念 映画俳優 池辺良」で観賞


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超高層のあけぼの [完全版] [DVD]
池部良
ジェネオン エンタテインメント
2009-03-25