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小津安二郎・黒澤明に重用され、その美しさと演技力で日本映画の傑作に、しかし決して出過ぎることなく常に調和し圧倒的存在感を遺した俳優・原節子 (1920-2015) が、唯一 川島雄三 (1918-1963)  監督作品に主演したのがこれ。 自称・川島監督作品の(新米)追っかけでもあるぼく、たっぷり堪能してきました。

黒澤組の常連・森雅之 (1911-1973)  は著名な弁護士で、そんな夫を持つ原節子は、神奈川・多摩川丸子橋近くにある大邸宅でふたり幸せに暮らしております。二人には子どもがおりませんが、  森が係争中の死刑囚の娘・香川京子 (1931-)  (黒澤組女優最多出演&小津「東京物語」で原と共演)を住まわせております。そこに大阪に住む原の親友の娘・久我美子 (1931-)  (両監督作品に出演)が家出をしてやってきたことから、原と森の夫婦関係がぎくしゃくしていくとゆう物語。



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原節子が出ているからつい、小津節と比較してしまう。小津安二郎が手掛けても不思議ではない文豪・ノーベル賞受賞作家・川端康成 (1899-1972)   原作作品だし室内劇、家庭劇でもあるので、小津安二郎だったらどう撮ってただろうか?とか想像しつつ、でもしっかり川島節でした。でも奇をてらわず、川島版小津映画みたいな?(川島監督は小津さんをリスペクトしてたそうなので)そんなこと言ったら天国の監督にそれぞれ怒られそうですが・・・。


原節子の元彼(15年前に別れた若き日の熱愛相手)三橋達也 (192302004) (黒澤&川島組常連) が出現したことで、ただでさえごった返す家庭が混迷し、原さんの表情はころころ変わっていきます。その表現・演技は今の感覚でいえばいささかオーバーアクトで分かりやすすぎるきらいはありましたが、巧みに演じている女心が伝わってきて、やはり凄い女優さんだなと。



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自室の書庫で資料を探す仕事一筋・森雅之、背後から食い下がる原節子




大阪弁まるだしでマシンガントークの久我美子(スレンダーでめっちゃキュート♡)は、実の母親より原節子を母親としてリスペクト&甘え倒します。原節子はそれを受け止めながらも、死刑囚の娘という引け目と遠慮で塞ぎ込む香川京子にも愛情を与えます。が、久我美子はそれが気に入らない。愛情を独り占めにしたいわけです。やがてはじきだされるような形で香川京子は家をでて、唯一そんな彼女を好きでいてくれる学生さんの家に飛び込みます。天下を取った形の久我美子は森雅之の弁護士事務所で働いたり、森の愛情も激しく求めていきます。原節子は香川京子が家を出たことに悲しみ、そうなってしまったのは、二人の娘たちに対する自分と旦那の愛情のバランスが悪かったのだとして自分と夫を責めます。



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久我美子♡ 手に障害を持つ暗いストーカーみたいな役柄で同じく森雅之に執心した 183「挽歌 (1957)」監督 五所平之助 の印象も深く、きっとそれ以前の作品かと思いきや違った。「挽歌」に比べてまったく違う明るさと若さゆえの毒、年頃の奔放な女性を見事に演じております。



テーマは「嫉妬」です。若くピチピチな久我美子の存在が、実子はいなくても幸せに暮らしていた原&森の夫婦関係にヒビを入れていきます。で、現代的に考えると、森雅之がとうとうついに久我美子と関係してしまい泥沼に突入する流れもあると思って見ていたのですが、キスまででそこはかなり「大人」な展開でほっとしました。



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香川京子♡も素晴らしい。 死刑囚の娘とゆうことを彼氏に告白し、それまで「結婚しよう!」と迫ってた学生さんが「遺伝するから」と離れて行く悲しさも乗り越えてたくましく生きて行く姿。どこかのサイトに書いてましたが、この映画における香川・久我の役柄は、どちらがどちらを演じても成立すると思える、それほど秀逸な演技力に感嘆しました。



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「女であること」とゆうタイトルを考えると、それは時代的に「主婦であること」つまり、旦那様にとってどうあるべきか?そこが主眼になっていると考えます。女子の自立とゆうよりは、男社会のなかにあって「女」はどうあるべきか?しかも川端康成=男性眼線の原作なわけだし。そこにティーンエージャーの二人の女性がはみ出していくわけですが、結果、原が妊娠したことで「女の幸せ=出産」みたいな形でハッピーエンドになるのは、さすがそれが「時代」なんだなと納得。

タイトルバック大写しで ♪ 女であること〜とシャンソン風で歌うのは ↓ 美輪(丸山)明宏。作詞・谷川俊太郎、作曲・黛敏郎、これはとても貴重です。



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美麗。




1962年だからわずか4年後の6月、川島監督が亡くなり、同じ年の12月に小津安二郎も逝去。そして両監督ほかに愛された原節子さんはその翌年に引退。1958年という年は日本映画絶頂のピークとしても語られる年だったので、時代がまた変わって行く、そんな時代の節目の1本だと思います。



感謝♡





優秀レビュー

https://ameblo.jp/runupgo/entry-11529493336.html


写真たっぷり分析サイト

http://beaubeau.jp/yuki/onnadearukoto.html


聖地巡礼(よく探すわ感心)

http://www5c.biglobe.ne.jp/~nuage001/photo%20kawashima%20onnadearukoto.html



キネマ旬報ベストテン1958 選外







2020年 9月25日
神保町シアター「生誕百年記念 映画女優 原節子 輝きは世紀を越えて」で観賞



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最近ようやくビデオが出たそうです





女であること
川端康成
新潮社
2013-06-14