トンデモ新東宝映画♡
新東宝の興行がいきづまり、天皇として君臨してたプロデューサー・大蔵 貢 (みつぎ 1899-) が退陣した直後、その呪縛から解き放たれたように、若きフィルムメーカーたちがその持てる熱量をスクリーンにぶつけたような(傑作!と言いたいが、正直)無茶苦茶でした(笑)。
そもそもそんな新東宝なんですから、他社のフツーと比べることも大間違いだし、他社がやらないことに(いくら低予算でもいくらエログロナンセンスと揶揄されても)血道をあげて取り組むのが新東宝なんですから(って知ったように偉そうにすみません)そりゃおもろいわけです。
冒頭、5人の悪党(とゆうかちんけな犯罪者たち)が、それぞれの犯罪で逮捕され(裁判シーンはなく)収監され、同じ刑務所の房室に入れられるところから始まります。 囚人ものの常で、親分風をふかす(他の作品なら姑息な弱者が多い名優)「カポネ」こと、多々良 純 (たたら・じゅん 1917-2006) が5人を仕切ります。次いで頭脳派、詐欺で女を騙して稼いでた「教授」こと、天知 茂 (あまち・しげる1931-1985) 武闘派「海坊主」こと 晴海勇三 バーのママの横恋慕に狂って殺人し、ママに恨みを残している「バーテン」こと 沖竜次 この4人にいじめられる役割で吃音症の強姦犯「色キチ」こと 大辻三郎 (資料なし) 彼らは狭い房内で、それなりに秩序をもって囚人生活を送っておりました。
↑ 小さな写真ですが左から「教授」「バーテン」「カポネ」「海坊主」「色キチ」
その房内にまたひとり、ぎらぎらしたヤツが入ってきます。彼は囚人のしきたりなんて知ったことか!と挨拶や席順や5人が「秩序」としていたことすべてに逆らいます。5対1で大げんかがはじまり、布団に巻かれてボコボコにされてもへこたれず、深夜にバケツと汚物入れをドラムセットに見立てて激しいジャズのリズムを叩いたりします(はっきり迷惑です笑)。そんな若くアナーキーなオトコこそ、この映画の主人公・ジェリー藤尾 (1940-)
とにかく若さ怖いもの無し、作業場でも喧嘩の毎日。ジェリー藤尾は当初演説ぶるので「全学連」と呼ばれます。これはきっとこの映画の数年前に主演した 058「偽学生 (1960)」監督 増村保造 における、学生運動の闘士を目指して狂っていく役柄を言い当てたものでしょう。この「ぎらぎらっ」でもぶっ飛んだ感じは同じかパワーアップしてました。
転じて「マイト」と呼ばれるようになったジェリー藤尾、ついにカポネぶち切れて隠し持っていた毒薬を茶に混ぜて飲ませて殺そうとします。しかしそこに情報が入り、ジェリーは総額数億円のダイヤを強奪し、ある場所に埋めたことが知らされます。脱獄計画を立てていた5人はジェリーも脱獄に参加させてやる条件で、そのダイヤを埋めた場所に向かい山分けしようと考えたわけです。
↑ 転じてボス気取りになるジェリー(写真右)
「ダイヤはどこに埋めたんだ?」の問いに、ジェリー答えます。
「地平線がぎらぎらっしている所さ!」
なんじゃそりゃ(笑)。
ま、タイトルですから。主題歌 by ジェリー
観ていてほんと疲れるのはこうゆうこと。「地平線がぎらぎらっ」しているとゆう曖昧蒙古な言葉に、大の悪党たちが本気になって途中、それぞれ命を狙ったり狙われたりしながら進んで行く物語で、関東圏から脱走してラストは「バーテン」の女が駆け落ちした信州(?)あたりの山奥に彷徨い込み、地平線なんてどこにもないのにそこを掘る。
でも疲れるんだけど、それが新東宝映画! 他のレビューも読みましたが、おれみたくつべこべ言うヤツゼロ! それでいいだから新東宝!
途中、逃走用に使ったバス。ずばり「疲れが吹っ飛ぶグロンサン」の宣伝カー(当然タイアップでしょう)で、6人はピエロなど扮装して身分を隠し、道往く人々にグロンサン振る舞ってました。
どこへと向うか分からない(ジェリーはテキトーに方角を指すのみで、みんなそれに従う)逃避行で「色キチ」が、ハイキングをしている女子学生3人組を発見、グロンサンバスは女たちを追跡し、恐怖で逃げる3人をジェリー以外の男たちが追いかけます、もちろん強姦目的です。逃げる哀れな女たち、山の斜面を必死に駆け上ります、追いかける野獣たちスカートの中から見えそうで見えない下着に興奮してます・・・とゆうまことにくだらないカットバックあったり、「あんたたち!ダイヤでしょ目的は!?」と突っ込みながら観てましたが、そうゆう時代、お色気とゆうのか好色とゆうのか、そうゆう要素を足すことが興行的にも不可欠なわけです。
たぶんシナリオを作る段階で、「若い女が逃げる」「パンツが見える」「オトコ興奮する」=ウケる ここまで単純ではないかもですが、そんな論理なのでしょう。
そんなことしてるから警察に見つかってしまいます。オトコたちはあきらめ、ひとり失神した女・星 輝美(写真左・新東宝末期にデビュー数年後引退) だけを拉致して逃げ続けます。車の中で目覚めた輝美ちゃんは、隣でライフル構えるジェリー(写真右)が自分を犯したと決めつけ激しくなじりますが、そのあとの逃亡でいつしか二人に恋心が芽生えます(他のオトコたちがそれでも輝美ちゃんを欲しがるのをジェリー、体を張って止めたりしたので)。
この星 輝美が可愛かった♡。
星 輝美出演作のポスターをずらり並べたマニアックサイト(貴重・感謝!)
お時間あれば ↑ クリックして見てください。 ↓ は1958年デビュー時の女学生役のスナップだそうですが、なんか今どきな佇まいでしょ? (1962年引退)
監督の 土居通芳 (1926-1975) は、とかくシナリオに注文つけるわ早撮りを要求するなどの天皇プロデューサー・大蔵 貢が大のお気に入りの監督さんだったらしく、ぼくは全然未見ですが新東宝で12本の映画を監督、その後テレビに移りわずか48歳で逝去されました。
1977年発刊「キネマ旬報増刊 日本映画監督全集」からプロフィールを転載し、その才能に敬意を表します。
おそらく土居さんも、間違いなく廻りの職人スタッフたちも、天皇が退陣したことで「やっと自由に作れるぞ!」と、そんなエネルギーがフィルムに焼き付いてます。が、この年、新東宝は倒産しました。
ジェリー藤尾・多々良 純はだから客演だったわけで、彼らからすると普段できないはっちゃけたことが現場ではマストだったはずなので、それはそれは生き生きと演じてました。ジェリー藤尾が脈絡なく、祭りの太鼓をJazz 風に連打する場面など、まだまだ語り足りないですがこのへんで。
新東宝倒産後、狂気ぶりよりニヒルなイメージで大活躍した天知茂もいい味だしてました。
もう一回、観てみたい。
キネマ旬報ベストテン 1958 選外
Youtube 予告編
https://www.youtube.com/watch?v=vH7BgpGHu3c
天知茂ファンサイトのレビュー(よく観て書いてます)
http://www.amachi.info/blog/index.php?e=559
写真たっぷりストーリー&レビュー
https://ameblo.jp/bareras/entry-12117454994.html
優秀レビュー
http://home.f05.itscom.net/kota2/jmov/1997_03/970324.html
2020年 10月9日
シネマヴェーラ渋谷「新東宝のディープな世界」で観賞
ビデオ出てます!!!(放映は無理!)
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