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面白い!



監督の 村山新治 (1922-)   は、1956年からシリーズ映画化された 「警視庁物語」 のなかのいくつかのエピソードで特に知られている存在。ぼくは別の監督の同シリーズを数本観ていたのですが、なるほどドキュメントタッチな作風であろうことは予測できたし、でもこの「七つの弾丸」のあとに作られた、同じ 三國連太郎 (1923-2013)   主演の 066「東京アンタッチャブル (1962)」  にかなりずっこけてたのであまり期待はしていなかったのです。が、ここはさすがというか脚本・橋本忍 (1918-2018)   の、そう、黒澤明の 227「羅生門 (1950)」 で脚本家デビューして以来、黒澤組、野村芳太郎、ほか数々の監督のもとで傑作を生み出してきた方による物語なので、いやあ痺れました。 そう書くと村山監督は大したことないなんて言いません、これはさすがの名シナリオを基にじっくりしっかり緻密に演出しなければこうはならないわけで、お見事、堪能しました。



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 ↑ 解説を先に読まずに良かった。 予備知識はラピュタ阿佐ヶ谷のチラシの文言のみ、三國連太郎演じる銀行強盗犯の物語です。しかし、彼が犯行を計画して東京・新橋の銀行の玄関前に下見にくる(単独犯です)場面から、その近くにある交番の巡査・高原駿雄 (としお 1923-2000)  が部長昇進試験めざして猛勉強中のエピソード、街を流すタクシー運転手(鼻歌まじりでテキトーで田舎の妻子を残してヒモ生活)の怪優・伊藤雄之助 (1919-1980)  のダメ男な生き様、さらに母親からお見合い結婚を迫られ、意見が合わず悩む銀行の出納係・今井俊二 (現:今井健二 1932-)  、彼らそれぞれの、強盗事件がおこるまでの日常がとても丹念に描かれ、そこに三國がなぜ強盗犯になったのか?その回想と現在に至る犯罪履歴が絶妙に絡み合って見事なアンサンブルにうなるのです。そして犯行当日、接点のなかった市井の三人の男たちが、一気に三國連太郎の自分勝手すぎる凶悪犯罪に絡められていくのです。


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ピストル一丁で銀行に乗り込む三國、ちょうど金庫に金を納めているのが、のちにヤクザもので姑息なチンピラ役で出まくる今井俊二。

出納係の今井は、弟が交通事故(伊藤のではない別のタクシーに轢かれて)で死亡、父はなく母親は今井にお見合い結婚を急ぐようにすすめています。長男である今井は母を元気づけるためにそれはその通りだとして、見合い相手とも意気投合するのですが、母は勝手に亡き夫の田舎の土地を売り、お金を作ってそれで盛大な結婚式をあげようとします。今井としてはこれから夫婦が共働きでがんばろうとしている時に、結婚式のために財産を処分するなんて馬鹿ばかしいと母をなじります。母は納得できず、今井の婚約者に愚痴をこぼしたりして婚約者も困ってしまい、母心と長男のプライドがぶつかり合って三者険悪になります。



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左:伊藤雄之助 右:三國連太郎



ちゃらんぽらんなタクシー運転手の伊藤雄之助は、三枚の運転免許証で偽名を操り、タクシー会社で事故などのトラブルのたびに職場を変えてます。そして水商売の女の下宿に住み込み、でも実は(千葉?)の農家に妻と三人の小さな子どもを残して失踪中の身の上、そこに稼ぎ頭を失った哀れな妻(哀れな役やらせたら宇宙イチ!)菅井きん (1926-2018)  が上京し、伊藤を探します。何度目かの上京で伊藤が物損事故を起こして二人は渋々再会、事故の損害賠償の件で伊藤は千葉に戻り子どもたちとも再会し、さらに菅井きんのお腹には四人目が芽生えてると聞き、ついに「今度こそ家族のためにちゃんと働く!」と改心するわけです。


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もうひとり、銀行のすぐそばにある交番に勤める高原駿雄。彼は寮でも勤務中でも法律書を暗唱したり、部長昇進試験に熱心です。田舎の1人息子で東京に出たからには出世して、田舎の人たちに胸を張って再会するのが夢です。でとても純朴でええヤツなんです。心配した田舎の友人とお昼ごはんを食べながら方言で喋り、熱く未来を語ってます。 しかし、三國連太郎の計画の第一は、先ず彼を交番の奥の部屋に拘禁して事件捜査を遅れさせることです。高原巡査は何も知らないまま、その日が近づいていくのです。

三國連太郎も元はええヤツです。北海道から上京し、いくつかの職を転々としながら安アパートで暮らし、そこで知り合った女医のインターン美女・久保菜穂子 (1932-)   とささやかな恋もはぐくんでました。 しかしやっと臨時雇いから正規雇用された広告会社の「大学の卒業証書を提出しなさい」という要求に経歴詐称で応えることができず辞め、職を求めて神戸の友人を訪ねますが友人の姿はなく、お金もなくなり食うや食わずの三國は道ばたで卒倒します。担ぎ込まれた田舎町の派出所で目を覚ました三國、真夏、拳銃を外して体を洗う警官、三國、拳銃を盗みます。気づいた警官と取っ組み合いになって発砲殺害。一発目使用、そう、あと6回の弾丸を使い切るまで、三國は堕ちていくのです。



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三人の市民、そこに三國の強盗計画、恋人には株でもうけたとうそぶき高級マンションに住み、恋人が医師になれば医院を作ってやると約束し、その資金のために強盗を繰り返し。それだけではなく、3人の市民の家族や関係者がそれぞれに絶妙にからみ、ぐいぐいどうなるのだ、どう落ちるのか?気がつけば前のめりになって観賞してました。

これは拾い物の1本、是非ご覧になっていただきたいのであまり詳しく書かないでおきます。観賞予定の方は 先の「かいせつ」も読まないほうが良いでしょう。 ラスト、三國は死刑になりますが、そこで完と思いきや、わずかですが3人の、無関係だったはずの男たちとその家族のその後が描かれます。ラストカットは哀れすぎる母、産まれたばかりの子を背負った菅井きんを見つめるしかない三人の子どもたちの顔で終わります。

すごいわ。このラスト。つっても観なければ伝わらないか?

是非の観賞を心よりおススメいたします。



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当時の新橋風景(今と変わらないガード下ぽさ)とか、もはや埋め立て高層マンションの芝浦風景などたっぷり観られます!




キネマ旬報ベストテン 1959 選外



脚本・橋本忍に触れたレビュー

http://www.eiganokuni.com/kimata/96-1.html


グッドレビュー

https://ameblo.jp/punkflod/entry-12057712347.html




2021年 1月29日
ラピュタ阿佐ヶ谷「実話にもとづく・・・Based on True Stories」で観賞




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ビデオあるやーん♡


七つの弾丸
永井智雄