1-1


ほのぼのすぎ♡



伊豆で農家を営み、11人の子どもを産み育てたかあちゃん、吉田とらさんの回想記を原作に、その奮闘、生きることへの愛がいっぱいに詰まった文部省選定みたいな映画です。

かあちゃんを演じる怪優・左幸子  (1930-2001)    の演技に浸りたくて。そう、このサイトで特に絶賛した、世界的にも評価の高い 165「にっぽん昆虫記 (1963)」監督 今村昌平  があり、 136「五瓣の椿 (1964)」監督 野村芳太郎 の出番は少ないが、強烈妖艶なキチガイ演技 があり、079「飢餓海峡 (1965)」監督 内田吐夢 において日本映画史に残る名演技に至ったそのすぐあとの作品がこれ。いやはやこれも左幸子、ストレートな映画なのでエロもグロもないのですが、しっかり役柄を生きてました。最高!



1-2



夫役はおよそ3年後に「男はつらいよ」のフーテンの寅さんとしてリスタートする 渥美清 (1928-1996) で、寡黙な働き者です。時代は大正から、わずか14歳の左幸子(を、当時36歳の自身が演じる!)が嫁入りするところからはじまり、じゃんじゃん子ども産んで、渥美清は日中戦争と大東亜戦争と2度の出征を生きのび、左幸子は、出征中は男手がないのに産まれたばかりの子どもたちを世話しながら野良作業、酪農業に懸命に働いて、やがて子どもたちが自立し公務員や教師とかまっすぐに育っていく、そんな一代記を淡々と見せてくれます。



1-3



実話ですからすごいことです。これを書いている僕自身は4人兄姉で、それでも多いな〜と思うくらいなのに11人です。で、本当は絶対色々あったと思うのですが、映画では徹底的にまっすぐなんです。つまり、11人、誰も曲がらない、ひとりくらい引きこもったりグレてシンナーやったり万引きしたりイジメしたり男と泊まったり深夜帰宅したりとか一切無し! 映画の冒頭は、彼らにとっての年一回恒例行事の丘の草刈りシーンからはじまって、その後左幸子の回想シーンへと移っていくのですが、この恒例行事に11人と既婚者の妻とかが集結するのですが、みんな爽やかすぎて仲が良すぎて、子どものひとり、(3年後に寅さんの妹サクラとして活躍する)倍賞千恵子 (1941-) が教師として地元で採用がなく、北海道に赴任したいがどうか?と家族会議を開き、みんなの意見を聞く場面があるのですが、みんなそれぞれを愛しているからこその意見ばかりで破綻しません。



1



戦地で死期を覚悟した渥美清の手紙を、覚悟の部分を隠して家族に読み上げる左幸子の気丈さとかはあっても、渥美清死にませんし、伊豆だから空襲警報は鳴っても焼け野原にはなりませんし、だからと言って幸せ、順風満帆では決してないのです、戦中戦後の厳しいなかでの苦しい生活はあったにせよ、11人の子どもたちが(正直)気色悪いくらい真っすぐに生きている物語なんです。それには何よりも実在の吉田とらさん=演じた左幸子さんの、正しすぎる子育て方があったわけで、この映画はそれをストレートに伝えてくれます。



51yOmE15ahL._SX326_BO1,204,203,200_



 ↑ 原作本(当時)



 ↓ 90年代に長女による続編も出てます。



41Y3D6ZBRWL._SX318_BO1,204,203,200_
 


11人の子どもたちの成人時代を演じるのは昭和の名優ばかり、その中におよそ5年後、初代・仮面ライダーとして変身する 藤岡弘 (1946-) と、その後時代劇スターや現代劇でおもにテレビで活躍し、1994年にテレビドラマ 「古畑任三郎」 シリーズで超絶ブレイクする 田村正和 (1943-) の若すぎて恥ずかしいくらいな(笑)姿もありました。

カラーで観る昭和、伊豆の風景、その後名優として語られる方たちの若き姿。それだけでも大感謝なひととき。映画は決して挫折や苦難に満ちたものばかりではない、ほのぼの幸せな気分に浸れたひとときでした!





キネマ旬報ベストテン 1966 27位





素晴らしいレビュー

http://home.f05.itscom.net/kota2/jmov/2011_01/110124.html






2021年 2月18日

ラピュタ阿佐ヶ谷「実話に基づく Based on True Stories」で観賞



d6f116ea-s



ビデオない〜