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よっぽどの大島渚フリークでなければ、そしてぼくみたいに古い日本映画を掘り続ける人でなければ、まったく「何これ?」みたいな1本でした。 つまり滅多に劇場上映されないものなので劇場へ馳せ参じたのですが土曜日の夕方、結構満席、がみんな肩すかしって感じの印象(笑)。

製作は日本生命。 が、どうゆう宣伝的目的かは知りませんが作った1本なので、テーマは「子どもたちの安全」「未来ある子どもたちと大人」なのでしょうか? こんなものを若き奇才・大島渚がどう造るのか? 案の定、やや奇抜です。細かいカット割りやカットバック、そして全編に渡って効果音と音楽のみでほぼ台詞(喋っていても)OFF。 60分間、恐らく3歳児くらいの主人公の男の子にカメラは向けられています。

凄いと思うのは、3歳児をしっかり演出できていること。 これ、子どもを演出したことがあるぼくだからこそ、その大変さが分かります。いくら意図を持って接していても、意図なんて3歳児には関係ないわけで。 眼線が違ったり、泳いだりするのは当たり前なのに本当にうまく撮れている。 

団地住まいの坊っちゃん、パパの出勤のお見送りで外へ出ますが黄色のライン(車道との境目)を越えてはダメと厳しくしつけられているので我慢します。 そのラインを越えると車はじゃんじゃん路面電車も走ってるし、見るからに信号や横断歩道も今のように整備されてないのでめちゃくちゃデンジャラス。 が、そのラインを越えた所に10円玉が落ちているのを見た坊っちゃん、ついラインを越えて拾ってしまいます。

そこから彼の冒険旅行がはじまります。大人たちでぎゅうぎゅう詰めの都電に乗って、後楽園遊園地、なぜか競馬場、危険極まりない工事現場とか、それぞれで優しい大人たちに接して無事なんですが、大人たちは誰も坊っちゃんを交番に連れていったりすることなく、坊っちゃんはひとり無垢なままロードムービー。

かなりシュールな怖がらせで坊っちゃん大泣きしたり(今なら絶対ダメな演出)まさに冒険を終えて、なぜかひとりちゃんと団地に戻って完。

日本生命はこれで良かったのか? 生命保険加入者は増えたのか? なんか変な心配をしてしまいました。


坊っちゃんが今元気であれば、ぼくより5歳ぐらい年上だ。


大島渚もこの時代、こうゆうPR映画も作らざるを得なかった、しかししっかり演出の妙を感じさせた一作。 フィルムはカラーでしたが激しく褪色してて、それは残念。






キネマ旬報ベストテン 1963  選外




知っている人の的確レビュー

https://molmot.hatenadiary.org/entry/20060210/p1


客観的、手短か的確レビュー

https://lp.p.pia.jp/shared/pil-s/pil-s-21-01_98ecb074-bd89-4d82-8319-e6ba174b84d4.html


辛辣レビュー

https://mukasieiga.exblog.jp/12025291/







2021年 4月17日
シネマヴェーラ渋谷「OSHIMA Mon Amour」で観賞

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